弁護士が社会保険労務士資格を取得するメリットとは?
公開日:2023/03/15 最終更新日:2023/02/22
弁護士の仕事は高度な専門性が必要になって来ており、ほかの資格を保持することで仕事の幅が広がり、引き受け件数増に貢献するといわれます。ここでは弁護士と社会保険労務士は何が違うのか、弁護士が社会保険労務士資格を取得するメリット、弁護士と社会保険労務士は兼業可能かどうかについて解説します。
弁護士と社会保険労務士は何が違う?
弁護士はご存知、国内外最難関資格の一つです。顧客の求めに応じ、弁護することで報酬を得られます。その権限は非常に広範囲におよびます。刑事事件、民事事件などの弁護はもちろん、会社に関する諸法令と内部規約のすり合わせ、作成補助、労使間の交渉すべてに関する代理権、企業法務、顧問などがその例です。簡単にいえば、法律に関わるすべてのことに関わる権限があり、顧客の権利保護のためにすべての代理権を行使できます。
一方、社会保険労務士の権限は名前のとおり社会保険、労務などに関わるものに限定されます。さらに、それらの交渉、法的手段の実行はできず、助言、同席にとどまります。たとえば「務めていた会社がブラック企業で、残業代はおろか有給休暇もまったく取らせてもらえなかった。残業代と有給休暇分の給料の回収をしたい」という顧客がいたとします。弁護士は交渉に同席したり、訴訟、示談についての法的措置を講じたりできますが、社会保険労務士は交渉に同席して顧客に助言したり、残業代などの計算をした資料を作成したりすることしかできません。実際の問題解決能力という意味では弁護士のほうが圧倒的に高いといえるでしょう。
弁護士が社会保険労務士資格を取得するメリット
上記のように、社会保険労務士は権限の範囲が弁護士に遠く及ばないのが分かりましたが、弁護士が社会保険労務士資格を取得するメリットはあるのでしょうか。答えは「限定的だが、ある」でしょう。まず、弁護士としての市場価値が上がることが挙げられます。一般人のイメージでは、弁護士すべての諸法令に精通した法律のスーパーマンのようなイメージを抱く方もいると思いますが、実際は違います。弁護士は、確かにあらゆる諸法令に精通してはいますが、得意、不得意があります。「会社法、企業法務に強い」「損害賠償業務ならお任せ」「刑事事件なら誰にも負けない」といった具合です。
弁護士に依頼する際に、もっとも重要なのは自分が抱える問題を解決するのが得意な弁護士に依頼することです。報酬は法律の定めにより変わらないため、しっかりと成果の出せる方に依頼したいのは当然です。そのような現実の中で、弁護士が社会保険労務士資格を取得していることを示せれば「労務に強い弁護士なのか。うちは企業法務などに精通した者が少ないから、ぜひとも来てほしい」「弁護士事務所の弁護士のプロフィール欄に社会保険労務士の資格を取得しているとあった。ぜひとも先生に依頼したい」などといったよい効果が得られるでしょう。そのため、必要とされる人材として給料が上がり、就職などに有利になることは間違いないでしょう。
また、弁護士の資格を持っていても安泰ではないという現実もあります。弁護士の登録件数は20年前くらい前と比べて合格枠の拡大などにより、2倍くらいになっています。つまり、弁護士の頭数が増え相対的に市場での競争率が高まっているのです。そのため、優秀な人材はすぐに採用されたり、自分で事務所を開設したりできるのに対し、そうでない方は資格を持っているのにいつまでも採用されず、働き口がないといったことにもなっています。この競争に勝ち抜くためにも、社会保険労務士の資格を習得しておくのは決して損にはならないことでしょう。
弁護士と社会保険労務士は兼業可能?
弁護士と社会保険労務士は兼業可能かということに関しては、結論をいえば可能です。社会保険労務士法第3条の規定には「弁護士は社会保険労務士になる資格がある」ことが明記されています。つまり兼業は問題ありません。社会保険労務のスペシャリストとして、顧客の利益のために助言し、場合によっては相手方と戦えるので、顧客からすれば心強い存在といえるでしょう。
また、企業労務などに精通していることは現在の社会状況からしても非常に有利なことです。労働関係に関する相談件数は近年、増加傾向にあり、労使ともに効果的かつ実行的なプロフェッショナルを求めています。弁護士と社会保険労務士は兼業することは、業務の幅を広げ、多くの方の問題を解決する存在として重宝されることでしょう。自分のできる仕事の幅を広げ価値を高めたいという方におすすめです。
まとめ
弁護士と社会保険労務士は何が違うのか、弁護士が社会保険労務士資格を取得するメリット、弁護士と社会保険労務士は兼業可能かどうかについて解説しました。弁護士は多くの案件を扱える反面、高い専門性を求められます。それゆえ、得意不得意が存在し、得意な分野をアピールできる資格は非常に有効なツールとなり得るでしょう。上記を参考に弁護士資格とともに社会保険労務士の資格取得も検討してみてはいかがでしょうか。